地方自治観察日記

都政新報の気になる記事の要約とコメント

2015年2月27日付都政新報

足立区 国保業務の委託見送り 民間派遣職員で対応(2面)

研究会発足当初は戸籍以外にも順次委託という話だったが戸籍業務の外部委託については周知のとおり東京労働局から指摘を受け見直しを進めているところであり準備期間がもう少し必要だという判断か。
「定数削減によって常勤職員が21人減、非常勤職員などか35人減となり、65人の派遣を受けるが、滞納整理などの業務のために常勤職員を6人増員するため、国民保険課は『通常の異動と変わらない範囲』と説明している。」
滞納整理が残るのは、外部委託によっても変わらないだろう。

神奈川県→横須賀市 児相移管 人材育成など課題に(3面)

児相を中核市に移管した場合のメリットや問題点について丁寧な記事。
「市では、一般職員が大半を占めるため、福祉関連の部署に配属されても、その後は全部署が異動対象となり、児相開設当初に育成された市職員は現在、ほとんど児相には残っていない。そのため、ノウハウが定着しにく〔い〕」「福祉人材は専門職で採用し、プロパーとして育てることが重要」
都道府県や政令市のように採用の入り口のところで専門職枠を設けていない自治体にとって増加する福祉部署の人材育成は悩ましいところ。やる気を引き出す仕組み作りができればいいと思う。

2015年1月20日付都政新報

都議会図書館に局長お勧め本(2面)

記者席から。都議会図書館に局長お勧め本が登場したとのこと。都議会事務局が独自にヒアリングしたのではなく、都人材育成センターが作成した「局長お勧めの一冊」をもとにポップを付けてフェア展開中だそう。都議会図書館のように議員や都庁の職員が基本的な利用者として想定されている図書館であれば、局長などの内部のコミュニケーションを図るためにもこのようなイベントを企画していくほうがきっと面白い。

病児保育、民間が本格参入 NPOが5市で訪問型開始(3面)

そのNPOとは駒崎さんで有名なフローレンス。23区全域はすでにカバーしており、武蔵野、三鷹狛江、府中、調布、西東京に限られていた多摩地域への進出を拡大し、1月6日から立川、町田、小金井、国分寺、多摩の5市でも事業が始まる。

今回の事業は「東京都子育て応援ファンドモデル事業」を活用して訪問型病児保育を開始するというもの。フローレンスでは保育の質を高めるため、保育スタッフを直接雇用とするなど経費がかかる。フローレンスのようなNPOにとって補助金をうまく使いこなすことが運営の鍵といえそう。

病児保育のニーズはあっても言葉の認知度は高くないため、「5市の保育課に協力を得て保育園や小児科医院などに告知チラシを置いてもらい、利用者を増やしたい」(フローレンス病児保育事業部・山口裕介マネージャー)。フローレンスの病児保育は、生後6ヶ月から小学6年生までの子供が病気になったときに、病児保育専門のスタッフが自宅を訪問し保育をする。サービスが手厚い反面、利用者負担が高額で、町田市病児保育室と比べた場合、10倍以上になるとの試算も(一部の区ではベビーシッター利用助成が受けられ、フローレンスのサービスにも適用がある)。

記事の末尾で、今回事業が開始となった5市の病児保育についての整備方針がまとめられている。多摩市のところだけメモ。

「多摩市は今年6月に定員6人の病児・病後保育室を多摩センター駅前に新設し、全2施設となるが、ファミリーサポートセンターの利用も促進したい考えだ。」

2015年1月16日付都政新報

検証首都直下⑥施設の職員も被災する(2面)

災害救助法では第2次避難所(福祉避難所)の設置が義務づけられている。地震などの災害時、第1次避難所として学校などに避難所が設置されるのは周知のとおり。3日ほど経過して、一般の避難所では生活に支障があり特別な配慮が必要な人(高齢者、障害者、妊婦など)を福祉避難所に振り分ける。東京23区では福祉避難所の約半数が高齢者施設である。

記事の内容は、2014年11月30日に愛生苑(東京都多摩市の特別養護老人ホーム)で行われた訓練の様子を記している。高齢者施設を避難所にするといっても、高齢者施設(老人ホーム等)には通常の入居者がいる。被災した通常の入居者のケアに加え、特別な配慮を必要とする人たちが移送されればその避難者たちの受け入れもしなければならない。これは結構ハード。

愛生苑は幸い近隣にマンションが多いため、マンションの自治会の力を借りる方法を模索しているようである。

理解と納得の住民対応②不当な要求はどこで判断(4面)

今回も日暮里・舎人ライナー建設現場での具体例から。事例は、苦情が暴力団絡みのゆすり・たかりであったというもの。もちろん、苦情を受け始めた段階では行政暴力だとは断定できず、善良な都民であるはずだとの想定で対応する。

記事が指摘するように正当・不当な要求を線引きする明確な基準はない。「万一、自分で『不当な要求だ』と判断して、それが誤りだった場合、民法を根拠に、名誉毀損または人権侵害を被ったとして、職員個人が訴えられる場合がある。」「過去に入都3年目の若手職員が確証を得ずに安易な自己判断でクレーマー扱いして提訴されそうになったこともあった。」

正当・不当な要求の線引きは不可能なのか。記事は総務局法務部の助言(相当因果関係の範囲内かどうかで判断する)を引いて結ぶ。「『不当な要求は明らかに因果関係が認められず、要求額の算定も合理的根拠を欠く。』この相当因果関係を立証することで、客観的・合理的に正当な要求と不当な要求を線引きできるようになる。苦情・対応処理簿を細かく書き、物証・人証・書証を残すことが、現場の義務と責任であり、自分の身を守ることになる。」

なるほど。相当因果関係の裁判例を調べる自主研究グループをやったら面白いかもしれない。

この連載は法学ネタが多くて大変興味深いですね。

2015年1月13日付都政新報

理解と納得の住民対応①日暮里・舎人ライナーの現場から(4面)

日暮里・舎人ライナー工事の際に寄せられた住民からの苦情を通して住民対応の課題を検討しようという記事。住民対応のコツはもちろん、行政法で頻出の「反射的利益」が実務ではこんなふうに関わってくるのかと勉強になる。

鉄道工事 のために道路の交通規制をする→沿線飲食店の売り上げが減少する。このような場合、営業上の不利益を受けたとしても、営業補償が認められない。法律的にはその論理でまったく問題がないのだけれど、実際に人生がかかっている人を目の前にどう説明するかは難しいところ。経験がものを言うのだろうか。

そうそう、当時の法務セクション担当者(総務局法務部審査法務室)に相談したときに投げられた言葉が冷たくて笑える(でも、公務員あるあるだと思う)。「本件、反射的利益ですよね。建設局さんで処理方針を固めて対応してください」。

お笑いで悪いヤツらをぶっとばせ!都消費生活総合センター連携担当専門員 磯部香保里(6面)

若者向けの悪質商法被害防止を訴えるために都消費生活総合センターが選んだのは「芸人ラボ」。芸人ラボは、クラウドファンディングを使って若手芸人を支援するウェブサイト。月1回、特定のテーマに沿って芸人たちがコントで面白さを競う。

「このサイトとタイアップして、お題『悪質商法』でネタを披露したら、お笑いを見るつもりでこのサイトにアクセスした若者が知らず知らずのうちに悪質商法について勉強できてしまうのではないか」

で、結果は大成功。2014年12月の公開収録には2,000人もの来客があり、座席は抽選になったほど。

夢があってイイ仕事。世の中の動き(今回は芸人ラボ)に目を向けることがいかに大切かを実感する。

2015年1月9日付都政新報

証明書提出が不要な「おもてなし」(3面)

「情報化革命 満足するサービスへ」というタイトルの新連載第1回。ヨム・ジョンスン氏が執筆を担当し、ソウル市の先進的な取り組みを紹介する連載になるとのこと。これは楽しみ。

「あるべき姿の電子政府・電子自治体推進 とは『いつでもどこでも証明書が出来ます』ではなく、『いつでもどこでも証明書提出が必要ない行政サービス』を提供できることが目的であり目標であるべき」

例えば、市民が本人確認のための公的書類を提出するのではなく、職員が行政情報共同利用端末を使ってネットで確認を済ませてしまう。そうすると、市民が色々な部署を歩いて証明書を手に入れる必要はなくなる。住民票を自宅で印刷できるサービスもあるらしい。

個人情報の漏洩対策をどのように施しているのか気になるところ。

2015年1月6日付都政新報

都議会と区議会(2面)

新春座談会に一部興味深い話があった。

田中良(杉並区長):「役所の人間は、杉並でも3500〜3600人の職員がいるけれど、杉並区内に住んでいる人は、3割強。」「役所の組織の中だけでは捉え切れない現場の声や感覚、実情を教えてくれるような発言」を区議会議員に期待する。

小原隆治(早稲田大学政治経済学術院教授):「地域密着型というか、かつては共産党がそれなりの能力があったと思うが、今はちょっと落ちてきているかなという気がする。元々、割と決まり文句みたいなことしか言わないところがあるけれど、その傾向が強くなっている。」

廣瀬克哉(法政大学法学部教授):「都市部の共産党には確かにそういう傾向がある。過疎地の町村では、議員の中で一番高学歴で、条例の素案を書けるのは、唯一の共産党議員しかいないような場合がある。地域代表の保守系議員もそれを認めていて、特別委員会の委員長に共産党議員を据えて、その人を中心に議員提出条例を取りまとめて地域振興のためにということも結構ある。」

翻って都市部では、他会派と連携して地域の課題を解決するインセンティブが弱いですね。共産党がなぜ地方議会で強いのかという長年の疑問が解けてすっきりした。

2014年12月26日付都政新報

東京都長期ビジョンの主な政策目標(3面)

多摩ニュータウンに関しては、都市戦略7(豊かな環境や充実したインフラを次世代に引き継ぐ都市の実現)と都市戦略8(多摩・島しょの振興)で言及あり。

現在:多摩ニュータウンなどでは、住宅団地再生が一部で実現するなど、多世代が安心して住み続けられる持続可能なまちへの再生が進んでいる。

政策目標:都営住宅の建て替え 2020年度一部竣工(諏訪団地)

東京都長期ビジョンの概要〜行財政運営の推進(2面)

人材の確保と執行体制の強化:努力し成果を上げた職員が報われる人事給与制度を進め、人材の精鋭化を図りながら、都民のために積極果敢にチャレンジする組織風土を醸成する。

不断の行政改革の推進:「社会保障・税番号制度の導入やオープンデータ化の推進など都政を取り巻く環境の変化に的確に対応」「標準処理期間の短縮や接遇の向上等による窓口事務の見直し」「ITを活用した業務改革や公会計制度の有効活用など、職員一人ひとりの能力を最大限に発揮できる仕組みを構築」「指定管理者制度など多様な経営改革手法の活用や、監理団体・民間等の様々な主体との連携など、最適なサービス提供主体による都政を推進」

人事給与制度や業務改革などは他自治体が模倣追随するような制度が構築されるのでは。要観察。

「専門的定型業務」を民間に 課題見つめ慎重な対応を 足立区外部委託(5面)

2014年を振り返る特集で足立区外部委託が取り上げられていた。現在指摘されている問題点は以下の2つ。

  • 民間事業者の職員が申請書類の受理・不受理を判断する「公権力の行使」を行っているとして東京法務局から是正指導
  • 事業者と区職員が行う「疑義照会」が指示行為に当たるとして東京労働局から偽装請負の指摘